MDMAによる未知の幻覚【スマートジャンキーリポート9】

 


今日は幸福が詰まった錠剤の話。


当時25歳くらい。自分は無職だった。親友が仕事から帰ってくるまで一人で退屈していた。


三軒茶屋のワンルームの部屋で一人大麻を吸ってゲームをしたり漫画を読んだりたまに公園まで散歩をしたり。


親友は仕事をしていたので平日は暇を持て余していた。その日は週末だった。

 

「ただいま」
「おかえり。今日ヨコヤマから電話来てたよ」
「なんて言ってた?」
「新しい罰が入ったらしい」
「気になるな。取ろうぜ」

 

プッシャーのヨコヤマから新しいMDMAが入荷したという旨の連絡が来ていた。当時自分たちはMDMAに目がなかった。週末は必ず食べていた。


MDMAは種類が豊富で物によって効き方がかなり変わってくる。ヨコヤマからの新入荷の連絡は自分達にとってサプライズだった。

 

「何個取る?」
「とりあえず今日使う5個くらい取ろう」
「そうだね」
「良かったらまた追加で取れば良いし」

 

新種のMDMAは当日使う分だけ取ろうというのが自分達のルールだった。なぜなら初見のMDMAは良いものかどうか使ってみるまで分からない。


プッシャーのヨコヤマはMDMAの注文を受ける際は5個からというルールを設けていた。一晩でお互いに2〜3個を消費するので5個取ることにした。

 

「22時に予約しといたよ」
「ありがとう」
「今日は三丁目のファミマで待ち合わせだって」

 

ヨコヤマとはいつもコンビニの中で待ち合わせ、外で受け渡しをするという流れだった。自分達はタクシーで新宿三丁目に向かった。

 

「ヨコヤマいた」
「俺取ってくるからタクシーの中で待ってて」
「わかった」

 

コンビニに入り、ヨコヤマとアイコンタクトを取り外に出る。そして袋に入ったお菓子の箱とお金を交換した。

 

「今日の何てやつですか?」
「レゴってやつですよ」

 

ヨコヤマとの会話はこれだけだ。外に長居するとリスクも高いのですぐにタクシーに乗り込んだ。

 

「いつものカラ館に行こう」
「そうだな」

 

自分達はMDMAを食べてカラオケに行くことが多かった。クラブはうるさくて疲れるから苦手だ。聞きたくない曲も聞かされる。


カラオケは自分達のペースで遊べるから好きだった。MDMAを食べて具合が悪くなった時も対処しやすい。


自分達は新大久保のカラ館に向かった。新宿は警察が多いのでなるべく避けていた。

 

「今日のやつ評判良いらしいよ」
「ヨコヤマ毎回良いって言うよな」

 

カラ館に到着し、部屋に入ってドリンクを注文した。その後お菓子のパイの実の蓋を開けた。レゴの名前にふさわしいブリキのおもちゃの形をしたMDMAが入っていた。

 

「可愛い見た目してるね」
「こんな形の奴もあるんだな」
「とりあえず食おうぜ」

 

空腹の胃の中にレゴを投入した。そして喋りながら薬効が出るのを待った。カラオケに行ってもずっと歌っているわけではなく喋っている事が多かった。


他人が近くに居ない空間を好んでいただけだ。余計な勘ぐりも気にせず、親友と楽しい時間を過ごしたかった。

 

「どう?効いてきた?」
「ああ、手汗が凄いわ」

 

レゴは強力なMDMAだった。当時はS玉と呼ばれていたかな。ただ、当時のS玉と今のS玉は全く違う。


今のものは強くは効かず、ただ眠れないだけみたいなものが多いみたいだが、レゴは効果が強いと評判だった。1時間後には自分達はすっかり効いていた。

 

「レゴ最高だね」
「ああ、カラオケやろうよ」

 

そう言ってカラオケを始めた。親友はよくAviciiを歌っていた。Aviciiの音楽を聞くと当時のことをフラッシュバックすることがある。 脳が覚えているんだろう。


MDMAを食べて聞く音楽は脳が音に襲われる感覚があり、最高だった。二個目のMDMAを食べてひたすらカラオケを続けた。


MDMAにはEDMやヒップホップがよく合う。音が脳に突き刺さり異常な高揚感を覚える。


ふと尿意を催し、カラオケの最中トイレに行った。 トイレのドアを開けると赤色の小さな物体が落ちていた。

 

「おい!これMDMAじゃね?トイレに落ちてた!」
「いやそんなわけねえじゃん」
「いやマジだって!これ見ろよ!」

 

ドリンクで流してから舐めてみた。苦かった。それは正真正銘のMDMAだった

 

「うわほんとだ」
「潰れた奴がもう一個落ちてたから見てくる」

 

戻るともう一つは無くなっていた。自分達と同じように遊んでいた人間が落としてしまったのだろう。


MDMAを食べているときにMDMAを拾うなんて。こんな奇跡があるのかと印象深く、今でも鮮明に覚えている。

 

「こんなことあるんだな」
「俺もまさかとは思ったよ」
「これはどんなやつなんだろうな」

 

ここからが特に凄かった。1時間ほど経つと急に作用が強くなり、視界がおかしなことになり始めた。


親友の顔が急に動物に変化し始めた。顔の右半分だけ顔の色や表情が常に変わる。トラ、ワニ、シマウマ、キリンなど変化し続けるのだ。


これは流石に呆気にとられた。しかもかなりリアルだ。動物園で見る本物の動物よりもリアルな質感。


トイレに行くとタイルが全て麻雀牌に変わっている。そしてその牌に書かれている漢字は常に変わっていく。目が忙しい。


そして部屋に戻り、壁に目を向けた。すると突然壁が開き自転車に乗ったピエロが壁の中から出現した。急にサーカスが始まったのだ。


そのピエロは不気味に笑っており、時計回りに宙を一周すると壁の中に入っていく。そして壁の中からまた出てくる。これをループしている。


あまりに奇妙だ。親友にはカラオケの空間に存在するはずのない知らない他人が見えていたらしい。


過去に見えないものが見える幻覚は経験したことがなかった。この日はかなり不思議な感覚だった。


こういう幻覚は厳密に言うと幻視と呼ばれる。多分トイレで拾って食べたMDMAに変な成分が入っていたんだと思う。


オピオイド系のMDMAを食べるとこんな感じの効き方をする。イメージしたものが実際に存在するかのように見えてしまうのだ。


妄想が現実に見えてしまう状態。思い込むとそれがあたかも現実世界に現れてしまうのだ。精神病の方がこのような症状が出ることがあると言われている。


少し落ち着いたところで家に帰った。いつになったら視界が戻るんだろうなという怖さは少しあった。


程なくして視界が落ち着き見えないものが見えなくなったことに安心したのを覚えている。


もし君が友達とドラッグを食べて友人がおかしくなってしまったら必ず

 

「大丈夫だよ」

 

と声をかけてあげてほしい。声に出すことで自分も安心することができる。


親友に絶対に元に戻るから大丈夫だと声をかけ世田谷公園を散歩したのをよく覚えている。


言葉は使い方次第だ。人を生かすこともできるし殺すこともできる。そして発した言葉は相手に向けているようで自分にも向いている。

 

 

このドラッグリポートは副作用も無く極めて事実に近い薬物接種体験を楽しむことができます。安心して服用して下さい。

※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。

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