不定職者の日常【スマートジャンキーリポート16】
「巨大なガンコロ入ったよ、早くヤサ来いよ」
体に激痛が走り、ガラスパイプを手に取って炙る。
寝起きの覚せい剤は猛烈に不味い。でも覚せい剤を炙らないと体が痛くて起きることができない。
この時の自分は3日間起きて2日丸々寝るという変な生活をしていた。
覚せい剤使用者にありがちな生活リズム。
商品の仕入れがあったのでアジトとして使っていた民泊に向かった。
「お疲れ」
「今回のどうですか?」
「めっちゃええで、100gあるけどもう予約で埋まっとるわ」
入荷した商品は覚せい剤。
覚せい剤の形状も色々あるけど100gクラスの量を取った時は塊で来ることが多かった。
ジップロックに大きな塊がゴロゴロと入っている。仕入れた段階で細かいものはこれまで見たことが無い。
使っていた民泊のテーブルにはいつも大きな電子天秤と大量の麻薬が置いてあった。大麻、LSD、MDMA、コカイン、覚せい剤。いつも全てのものが揃っていた。
仕入れの資金は売人のリーダーがまとめて出していた。それを毎日毎日売人が客に小分けにして捌いていく。
自分は売人が薬物を捌いている光景をいつも傍から見ていた。
「これいくらで仕入れたんですか?」
「g7000円やな」
「物良いのに安いっすね」
「そうやろ。すぐ無くなるで」
基本的に民泊に居たのはリーダー以外みんな末端の売人。
末端の売人に大きな注文が入ったらリーダーがその案件は直接受ける感じだった。
当時仕入れたものだと、覚せい剤100gがg7000円なので仕入れ値は70万円。
今は覚せい剤が高いけど昔はかなり安かった。
100gを小売の売人が0.5gで15000、1gで25000で客に売る。
これは目安で、取れる客からは1gあたり5000円くらい上乗せして取っていたと思う。
利益はリーダーと売人でだいたい折半。
なので0.5売ると約6000円ずつの利益。1gの場合だと約9000円ずつの利益。
これが最低の利益で高く売れたら+2000~3000円追加される感じ。
この覚せい剤100gが捌けた時に150〜200万くらいの利益が上がってそれをリーダーと売人で分ける感じになる。
良いものだとほんの数日で全て無くなる。
たまにマブネタと呼ばれるすごく良いものがあって、それはプッシャーでも買うのに1g3~4万する。
それはとにかく質が良くて少量で背筋までゾクゾクと効く良いものだった。
でも良い物は末端の消費者には絶対に回ってこない。
消費者に回る前にプッシャーが消費するから。
「そういえば友達が罰と紙欲しいって言ってたんですけどありますか?」
「あるで。罰なんて1000発くらい在庫あるわ」
「5個もらっていいですか?」
「今日儲かったから1万円でええで」
リーダーはMDMAを凄く安い値段で取っていた。良いパイプが合ったんだと思う。いつも大量に持っていた。
仕入れ値は1000~1500円くらいで売人には2500~3000円で卸していた。
客には5000円くらいで売るから1個あたり3500~4000の利益。
MDMAは1個に対する利益は小さいけど好きな人が多いからとにかく量が捌ける。
大量に在庫を抱えてもすぐに無くなって他の銘柄に変わっていた。
自分も最初ドラッグにのめり込んだのはMDMAからだったし若い人はみんな好きな印象がある。
「この角砂糖なんですか?」
「これはLSDやで」
「LSDって紙じゃないやつもあるんですね」
LSDは元から紙に染み込んでいるタイプと液体のタイプがあった。
元から紙に染み込んだ状態のLSDはインポートだから質がいいとか言われていた。
自分は効けば何でも良かったからあまり良く分からなかったけど。
LSDは100回分のボトルに入った液体を7~10万円とかで取っていたのかな。
自分がよく食べていたのは角砂糖に垂らされたタイプ。
グミとか紙とか色々あったけど角砂糖が一番よくLSDの液体が染みる。
10滴くらい垂らされた角砂糖を食べて大変なことになることもよくあった。
LSDも5000円くらいで客に売れるので、売人に卸す金額はMDMAと同じような感覚で、利益も似たようなものだった。
「最近チャリンコは調子どうですか?」
「チャリは良いのあっても高いな」
「安いチャリンコって全然良いの無いですよね」
コカインは特に質の良い物と悪い物の差が激しかった。自分はコカインの目利きをよく任されていた。
仕入れの値段がだいたい1g10000~12000円くらい。自分はコカインの仕入れを手伝っていたので毎回タダで貰っていた。
売人には16000~18000円くらいで卸していた。
コカインは人によって混ぜ物をする人としない人がいる。
売人のリーダーはクレームが来ないように混ぜ物をせず売っていた。けど末端の売人は混ぜ物をして売っている人が多かった。
コカインを捌ける末端の売人は儲かっていた印象がある。混ぜ物で量を増やすとその分丸々利益になるから。
売り値は今の相場と変わらなくて1g23000〜25000円くらい。
売人の利益には客の質も関係してくる。特に覚せい剤は客の質が悪い。
自分も覚せい剤をやっていたのにこんなこと言うのも何だけど、覚せい剤はお金の持っていなさそうな客ばかりだった。
みんな金が無いし身なりもあまりよろしくない。金があって綺麗に遊んでいる人なんて本当に極一部だった。
その点コカインは客の質が良かった。良い客だと数十gが一気に売れるし、コカインは客が消費するスピードも早くて注文がすぐ入る。
「そういえば大麻全然ないねん」
「最近全然いいの無いっすよね」
大麻も物によって値段がかなりバラツキがある。安いものはキロで1200円とかで仕入れられる。
インポートとか国内栽培の質の良い物は100gでも3000円くらいする。キロだと2200〜2500くらい。
小売価格は、質の悪いもので4000円とかで良いものは6000円とかでも売れる。
大麻ほどわかりやすく値段と質が比例するドラッグもなかなか無い。
大麻は特に安くて質の悪いものは捌けないし、高くても質の良いものは捌ける。
これはどの薬物にも言えることで、安いものが高いものより良いなんてことはまず無い。ちゃんと理由があって値段が付けられている。
色んな大麻を吸ったけど日本国内で栽培してる上手な人の大麻が一番美味しかった。
売人もそれはよくわかっていると思う。インポートはなんだかんだ質にバラツキがある。
大麻は大麻が好きな人が良い物を持っているから、良い大麻が欲しい人は大麻好きと繋がるといいと思う。
売人は大麻の安定した仕入先を欲しがる。よく売人のリーダーは自分に栽培をやらないかと勧めた。
それがキッカケで後々大規模な大麻栽培を始めることになる。
自分はこの時は風俗とキャバクラのスカウトの仕事をやっていた。
売人達とは違うフィールドに居たから仲良くできたのはあると思う。
商売で関わるとトラブルも増えるしリスクも大きくなる。
接していた売人は基本金が無かったけどたまに飛び抜けて稼いでいる人はいた。
末端だとおそらく月に50万円も稼げていない人だらけ。しかもみんな金を稼いでも薬、女、ギャンブルに使ってしまう。
でも稼いでいる人はいた。予想だけど売人のリーダーや他のグループで力のある人は月に500万くらい稼いでいたと思う。
そういう人達はみんな組織を作るのが上手でビジネスのセンスがあった。
大麻農家に出資したり、使える人間を他のグループから上手く取り込んだり、暴力団と密に付き合って仕入先、販売先を広げたり。方法は人それぞれ。
狂った人間が多かったけど普通に生きていたら関わらない人達の価値観を知れた。
そもそも普通に生きるというのも、何が普通かなんて人それぞれだ。
世の中は自分にとっては普通だけど他人にとっては狂ってることだらけ。逆も同じ。
普通なんてのはその人が勝手に作り上げたイメージで、妄想でしかない。
これは狂った生活で得た学びだった。
※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。
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