LSDが教えてくれるのは「ヒント」【スマートジャンキーリポート5】
「自由って何だと思う?」
それは時間があることだとか働かなくていいことだとか何かに縛られないことだとか
人から指図を受けないことだとかそんなたわいもないことをワンルームの部屋で親友とよく話していた。
自分達は答えのない会話をするのが好きだった。それは会話をするための会話であり、何か正解を求めていたわけではない。
人生を彷徨っていた自分達にはお似合いだった。家では基本的には大麻を切らさないようにし、質の良さそうなものがあったら補充するというルールだった。
ただその日は残りが少なくなっていた。せっかくの週末なのに残りの大麻が少ないのは大問題だ。
「そろそろ草無くなるけど、ヨコヤマに電話してみる?
「まだ仕事だから連絡しといてほしい」
「何個にしようか?」
「10個は欲しいよな、あとアレも聞いといてよ」
「オッケー」
早速ヨコヤマに電話をした。いつもはワンコールで出るはずのヨコヤマがその日は出なかった。
「ヨコヤマ今日休みかも」
「まじか。とりあえずもうすぐ帰るよ」
「オッケー家で待ってるわ」
プッシャーの都合で大麻が引けないタイミングがたまにある。自分達は末端購入者の癖にグルメな方だったので、変なところに注文して質の悪いものを取りたくなかった。
なので親友が帰宅してから身内を探し始めた。とはいっても自分には大麻を吸う身内が親友しかいなかったので、親友が探してくれた。
「後輩が持ってるらしいから分けてもらおうぜ」
「それは助かるな」
「一緒に行こう。良いやつだから紹介するよ」
それから支度をして2人で五反田に向かった。後輩の家は目黒川沿いのマンションだった。部屋に入るとボングが置いてあった。
「ちーす。初めまして。よろしくです」
後輩は歳が2個下。話を聞くと親友が大学生の時にキャッチのバイトをしていた後輩だそう。
少し不良っぽい感じだ。後輩はガタイが良くて目つきが鋭かった。部屋についてからひとまず3人で大麻を吸った。
「美味いねこれ」
「なんていう品種?」
「ガールスカウトクッキーってやつです」
「可愛い名前だ」
なんて話をしていた。初めてのガールスカウトクッキーは焼き菓子のような、少し甘くて香ばしい味がした。美味しかった。
「実は今日これも持ってて、欲しいですか?」
「なにそれ?」
銀色のアルミホイルに包まれたものを後輩は出してきた。LSDだ。巷ではアシッドや紙やマゲとも呼ばれる。
ヨコヤマからちょうど次はLSDを取ろうという話を2人でしていたところだった。
自分達は二つ返事で頂いた。そして後輩とは別れて、タクシーに乗り込み家に帰った。
実はこの後輩は後々大麻栽培を手伝うことになる。それはまた後の話。
家に帰り、アルミホイルを開けると小さな紙が入っていた。何かの模様が描かれていたが、何の模様かは分からなかった。
※LSDを摂取する上でのセッティングについては、1話分丸々使って書きたい内容なので今回は摂取体験のみの話とさせていただきます。
※LSDは摂取する際の大事なセッティングや注意事項が多々あります。
それらを知った上で使わないと大変危険なドラッグです。万人にオススメできるものではありません。
「唇の下に入れておくって言ってたよな」
これも舌下投与だった。恐る恐る口の中に入れた。味はない。紙を口に入れておくのは何か嫌な感じだ。少し経つと紙がふやけてきて、飲み込んだ。
それから、1時間くらい経ったころだろうか。iPhoneを確認すると文字が少し動いて見えずらい。
「なんか少し視界が歪んできたんだけど」
「だよな、壁が動いて見えてきてる」
「それに時間の感覚もおかしくなってきた」
「そういえば食べてからまだ1時間しか経ってないのか」
LSDの作用で最も一般的に知られている、幻覚や時間感覚の欠如が表れてきた。俗に言う「曲がった」状態だ。
「ジョイント巻いて外にでも出てみようぜ」
外に出ると太陽がやけに眩しく感じた。いつもと違って視界がおかしく感じる。自分達はいつも通り世田谷公園へ向かった。
知っている道のりのはずなのに何故か初めて通る道かのように思えた。
「てか全然着かないんだけどなんで?」
そんなことを言いながら公園に向かっていた。LSDは時間の感覚が麻痺する。
遠近感が分からず、摂取してから時間がどれくらい経過したかも分からない。
すごく不思議な感覚だった。やっと公園に到着した。
「あーやっと着いたな、ちょっと歩いてみるか」
ふと木に目を向けると生きているように見える。空がこころなしか自分たちを見守っている感じがする
風も心地よい音を奏でている。芝生がやけにご機嫌なように感じる。滑り台のキリンは楽しそうにしている。
遊具のパンダなんて確実にこちらを見ている。目が合うと
「僕と遊ばないか?」
と誘われているようだった。やや奇妙にも見えたので遊具はやめてとりあえず公園の中央にあるベンチに座った。
親友に目を向けると噴水を見ながら手すりにもたれ、動かなくなっていた。
「大丈夫かい?」
「大丈夫」
「お前さっきからずっと噴水見てるよ」
「おお、水飛沫から目離せなくなってた」
「たしかに水ってよく見るとすげーな。ずっと見てられる」
「そういえば食べてからまだ1時間しか経ってないのか」
流れている水。流されている水。浮かんでくる水。ぶつかっている水。穏やかな水。水にも色んな水があるんだなと感じた。
水には普段自分には見せない色んな表情があった。水には「柔軟に生きろ」と教えられた気がした。
水も生きているのだ。
「そろそろジョイント吸って帰ろうぜ」
「そうだな」
「吸ったらまたすごいなこれ、そっちの調子はどう?」
「最高に決まってる」
ジョイントを吸うと頭が開けたような感覚があった。最高以外の言葉が出てこなかった。
そして自分達は日も暮れてきたので帰ることにした。最終的には帰る道がわからなくなってしまい、家の周りを何度も何度もぐるぐる回っていた。
ただそれさえ楽しかった。いつもの公園に行っただけなのに、アマゾンの奥地にでも行ったかのような大冒険をした気分だった。
くだらない日常に大きな衝撃を与えてくれた。LSDは普段気が付かないことを教えてくれる。物事の見方が変わる。
ただ、LSDが教えてくれるのは「ヒント」
だからLSDを接種して悟ったなんて言葉は使わない方がいい。
あくまでもLSDがくれるのはヒントだ。そこから答えに辿り着けるかどうか、結局のところは自分次第。
自由とは今聞かれたら、選択できることだと答える。
自由な時間があることでも、働かなくていいことでもない。選びたいものを選べる自分になることが自由だ。
自由に生きるためには選択肢を増やさなければいけない。そのためには知識や経験を増やして自分の可能性を知る必要がある。
自分はLSDを経験して良かったと思っている。あらゆるものが新鮮に感じた。
日常を退屈にしているのは誰でもない、自分自身だということに気づけた。
初めてのLSD体験は鬱蒼で窮屈で凝り固まった価値観をぶち壊してくれた。
このドラッグリポートは副作用も無く極めて事実に近い薬物接種体験を楽しむことができます。安心して服用して下さい。
※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。
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