コカインは「イケる」ドラッグだ【スマートジャンキーリポート7】
「なんか今日どこまでもイケる気しねえ?」
前回、真面目に話したから今日は最高に馬鹿げた話だ。甘いもの食べた後は塩っぱいもの食べたくなる。それと一緒。
ジャンキーのくだらない話が嫌いな方は今すぐ戻ることをオススメする。まあそんな人は一人もいないと思うけど。
当時の自分達は毎日大麻を吸って、週末は必ずケミカルを食べるというルーティンだった。
とはいえ平日も暇があったら食べていた。自分は相変わらず無職だったので、親友の仕事に合わせて遊んでいた。
「ただいま」
「おかえりー。今日はなにする?」
「とりあえず焚いて焼肉でも行こうぜ」
「いいね、行こう」
家の近くに肉人という焼肉屋さんがあった。家で大麻を吸ってからそこに行くのが週末の定番だった。
焚いてからの焼肉はとにかく美味しい。思い出すと唾液が出てくる。
「お前ホルモンだと何が1番好き?」
「マルチョウ一択だろ」
「いや、ハラミも譲れないね」
「あーたしかにハラミも美味いな。てか今日何するよ?」
「実は今日コカイン取る約束してんだよね」
「まじ?ちょうど俺もやりたいと思ってたわ。てか人に聞こえる声で言うなよ」
「あーごめんごめん。じゃあ出ようぜ」
焼肉を食べ終えて自分達は店を後にした。そして新大久保のホテルに向かった。
新大久保にはプッシャーとジャンキーしかいない異質なホテルがある。今日やり取りするプッシャーは「パイセン」だ。
パイセンとは最初Twitterで知り合った。当時自分たちは歌舞伎町にドラッグを取りに行く事が多かった。
パイセンも歌舞伎町がホームだったので共通の知り合いがたまたま何人かいた。歌舞伎町の先輩だぞと自分で言っていたのでパイセンと呼んでいた。
パイセンは30代半ばで色が黒くガタイが良かった。見た目は輩みたいな感じだ。
「俺は覚醒剤しか体が受け付けないんだ」
とパイセンは口癖のようにいつも言っていたのを覚えている。覚醒剤一筋の硬派な覚醒剤愛好家だった。そしてパイセンはドラッグの調達力に自信があった。
「俺より良い物を持っている人間はいねえ」
ガラスパイプから出る白い煙を燻らせながらいつもそう言っていた。プッシャーがよく言うセリフだ。
パイセンは覚醒剤を炙りすぎて、いつも機関車トーマスのように白い煙で包まれていた。顔が煙に包まれて見えないのだ。
「おうよく来たな。そろそろ覚醒剤吸うか?」
「いやー遠慮しときます。すいません」
「なんだよつれねぇなあ。てか今日はなんだっけ? ああ、コカインだよな。はいこれ」
「おお。今日はいつも持ってるのと違って塊ですね」
「今日のやつは間違いないと思うぜ」
渡されたのは固形のコカインだった。混ぜものが入ったコカインはサラサラしていることが多い。その日買ったものは見た目がチョークみたいでこれまで見た物とは違った。
話を聞くとパイセンの知り合いが密輸をやっているようで、メキシコからコンドームに入れたコカインを飲み込み日本に持ってきているというのだ。
胃の中に隠して密輸する手法は海外だと「コーク・ミュール」とも呼ばれる。日本だとそのまま「飲み込み」とか言うかな。
パイセンの作り話かな、とかその時は思った。その密輸の手法があることを後から知って作り話ではなかったと知った。
「吸ってみろよ」
コカインを机の上で崩して万札を丸める。少し弾力がありモチッとしていて硬かった。明らかにいつも見るものとは質感が違った。
例えるなら少し水分を含ませたチョークのような感じだ。根気よく潰さないとうまく粉にならない。念入りに潰して万札を丸め、吸い込んだ。
「いってきます」
2人同時にスーっと音を立てて吸った。
「どうだ?」
「あーなんか良い気がするけどまだ分かんないですね」
少し経つと鼻から喉にコカインが落ちてくる。露骨に心臓の鼓動が早くなってきた。視界もハッキリとしている。
ベッド横の照明がやけに明るい。手に汗が握る。体が軽くなる。
「やべ、顔面の感覚が無くなってきました」
コカインは麻酔なので上質なものだと顔の感覚が無くなり喋り辛くなってくる。その日もらったものは間違いなく良いものだった。
おもむろに親友は部屋をウロウロし始めた。効いている。
「どっか遊びに行きたい」
「いいよ。どこ行く?」
「たまには女遊びでもしてみねえ?」
「いいね」
自分達は普段女遊びをあまりしなかった。女の子と遊ぶより2人で遊ぶほうが楽しかったからだ。
コカインを吸って良い状態になった自分達は女遊びをしようということになった。でも普通の女遊びだとつまらない。
自分達はエンタメ重視だった。エロがしたい訳ではなく2人で楽しい時間を共有したかった。
「最近アパホテルで外人が売春してるらしいぜ」
パイセンは言った。興味津々だ。最近大久保公園の援助交際が流行っているが、この話は5年くらい前なので当時そんなものは無かった。
「じゃあとりあえずアパホテル周辺に言ってみるか」
パイセンにお礼をして、上質なコカインを1gずつ握りしめ新大久保のホテルを後にした。そして西武新宿駅あたりでタクシーを降り、アパホテルに向かった。
「あいつらじゃね?」
今で言うトー横の周辺に外人女が集まっていた。身長が高くヨーロッパ系に見えた。容姿も悪くない。後から聞くとオーストラリア人だったみたいだ。
「オニーサンオニーサン」
来た。やはりこいつらだ。
「どしたの?」
「アソビマセンカ?」
「いいよ。いくら?」
「イチマンゴセンエン」
「おっけー。4人でいける?」
「4ピーッテコト?」
「別々でいいけど同じ部屋でやりたい」
「イイヨ」
簡単に交渉が済んだ。自分達はあくまでエンタメ重視だ。どうせやるなら一緒にやったほうが楽しい。そしてアパホテルに案内された。
アパホテルは昔から無法地帯だ。宿泊者以外でも簡単に入れる。そして部屋に入った。
「てかコカイン好き?」
トイレで隠れて吸うのが面倒くさかったのでパケを出してストレートに聞いた。その瞬間明らかに女達の目つきが変わった。
こいつらもコカインが好きだった。とりあえず机に白いラインを引いて4人で吸った。明らかに女達のテンションが上がり始めた。はやくやろうぜと言わんばかりだ。
「お前どっちの女が良い?」
「どっちでもいい」
「じゃあじゃんけんで決めようか」
「じゃんけんぽん」
「女達のケツにコカイン引いて吸おうぜ」
「映画で見るやつね」
吸って行為を始めたその最中、おもむろに親友が外人の尻を叩き始めた。親友はオーストラリア人の尻を左右交互にパンパン叩きながら
「ドラムやってるみてえだ」
コイツはとんだ大馬鹿野郎だ。自分は行為の最中に笑って腹がつり息ができなくなった。
その後のことはあまりよく覚えてない。いつも思い出すのは最高に楽しかったシーンだけが切り取られているもんだ。
後の記憶は取るに足らないシーン。映画と同じだ。
そして記憶には容量がある。中途半端な記憶から忘れてしまうもんだ。
でも最悪のシーンは忘れちゃいけない。その経験を教訓にしてその後生きていかなければいけない。人生は続くから。
コカインは「イケる」ドラッグだ。爽快感と万能感でなんでもできる気がする。感情の高まる方向はMDMAと似た方向だが、系統が違う。
そしてコカインは瞬発力が高い。ビールで例えるならプレミアムモルツではなくアサヒスーパードライだ。切れ味が合って喉に来る。
伝わらないかもしれないけど吸ったことない人はそんな感じだと思ってほしい。経験者は分かると思う。
この後、自分は酷いコカイン中毒に悩まされる。数々のコカインを見過ぎたせいもあり、見ただけで質をある程度判断できる。
大口の取引の際に人に呼ばれ、数種類のコカインの中から一番質の良いものを選定する、コカインの目利きなんてこともやっていた。
色や形状や匂いにも色々種類がある。コカインを語らせると長くなるのでまた今度にする。
薬物で得られる幸福感は線香花火の灯火のように儚い。快楽主義はいずれ破滅を経験する。それは遅かれ早かれ。
作為的に上げてしまったものは必ず下がる。自分の居るべき位置を見極めることが大切だ。
この言葉の意味はいつか君にも分かると思う。
このドラッグリポートは副作用も無く極めて事実に近い薬物接種体験を楽しむことができます。安心して服用して下さい。
※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。
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