あの日の世田谷公園は柑橘系の匂いがした【スマートジャンキーリポート3】

 

 

「シラフはクソだ」
 


 
ありふれた日常はつまらなくて苦痛だった。昔から親にも友達にも彼女にもよく退屈そうだと言われていた。実際そうだった。


そのせいかドラッグを始めてからは刺激中毒になった。他に打ち込むことがないからたまたまドラッグに向いただけだと思う。

 
何かが辛いからとかではなく、単純な日常を送るのはつまらなくて仕方がなかった。将来がどうとかもどうでもよかった。


つまらない生活を送るなら死んだほうがマシだと本気で思っていた。もちろん同世代とも価値観は合わない。

 
同世代が飲み会や合コンなどを楽しんでる中、2人は来る日も来る日も真面目にドラッグに打ち込んでいた。そんな自分達にはルールはあった。

 
・人に迷惑をかけない。
・今だけを楽しむ。
・逃げのドラッグはやらない。
 

これを守れば何をやってもいいと思っていた。
 


「人に迷惑をかけない。」
 


これは簡単。人と関わらなければいい。2人とも他人と関わるのが嫌いだった。


あまり人に迷惑はかけなかったと思う。スマートに遊ぼうという親友の口癖はこれから来ていた。もちろん側からしたら様子のおかしい奴らだと思われていただろう。
 


「今だけを楽しむ。」
 


これも簡単。明日のことは考えなかった。明日のことを考えて摂取するドラッグは実につまらない。
 


「逃避のドラッグはやらない。」
 


これは非常に大切な心構えだったと思う。理由は辛さから逃げる為にドラッグを使ってしまうと、逃げた分だけ利息が付いて結局後からその辛さが降りかかってくるから。
 

辛さ×ドラッグの反動で二重で追い込まれる。そしてまた逃げるためにドラッグを使うという負のループになるからそれは辞めようと。
 

要は「楽しむためにドラッグを使え」ということ。何か心に不安要素がある時はより不安定になるケミカルなどは使わない方がいい。
 

2人でルームシェアを始めてからはドラッグの使用が急加速した。そりゃ一緒にいてやることなんてドラッグしかない。


常に大麻かチョコを吸っていた。他にドラッグをやる友達がいなかったから売ることもなく毎回2人で全て消費した。
 

潰れるまで大麻やチョコを吸い続ける遊びをよくやっていた。限界までチョコを吸ってライターの火を眺めると目の焦点が合わなくなって幻覚が見えて面白かった。
 

この時にはTwitterでの売買が盛んになってきていたのでTwitterで取引を行うこともあった。特にケミカルは身内が持っていなかった。当時は詐欺も少なかった。
 

最初にTwitterで知り合ったプッシャーはヨコヤマと名乗る人間だった。ヨコヤマは仕事のできるプッシャーだった。


仕事のできるプッシャーの要素は
 

・嘘を付かない。
・時間を守る。
・レスが早い。
・色んな意味でガキじゃない。
・ケミカルを日常的に使わない。
・キッチリ量を入れてくる。
 

まあ他にも細かいことはあるけど。当たり前のことだけど人間性がしっかりしている奴がいい。注文した量より入れてくる量が少しでも下回る奴はダメ。パケ込みのグラム数で渡してくるとか論外。
 


「入っている量に人間性が出る」
 


これはあると思う。ヨコヤマはいつも頼んだ量より少し多かった。
 

初めてのヨコヤマとの接触は緊張した。新宿三丁目での手押しだった。

 
タクシーで向かい、1人はタクシーに乗ったままで、もう1人がコンビニの中でヨコヤマと合流。そして外に出てお金とドラッグを交換してタクシーに戻るという流れ。
 

ヨコヤマはヒッピーみたいな見た目をした30歳くらいの少しイカつい兄ちゃんだった。


お金とお菓子の箱を引き換えに何なくスムーズに受け渡しをして家に戻った。それからは一週間毎くらいにヨコヤマから引いていたと思う。
 

そしてヨコヤマは大麻の品揃えが多かった。プッシャーからは大きく量を取ると安くなるし、値引きの交渉もしやすくなる。


何らかのお金が入ったタイミングで三種類の大麻を同時に結構な量を取った。その時の写真がこれ。

左上の黒い塊がチョコ。その右の四角いのがポーレン。その下がプレスされた大麻。下の大麻は今見ると質は良いものではない。


だが、ヨコヤマの大麻は品質が安定していた。自分達が「駄草」と呼んでいた、効果のない大麻は無かった。


そして大麻の加工物を持っているプッシャーは当時貴重だった。今ではチョコもポーレンもあまり見ることがない。なかなか良いものを吸っていたと思う。


チョコはハシシとも呼ばれていて大麻の樹脂を固めたもので大麻に混ぜて吸ったり、単体でパイプで吸ったりするもの。


ジョイントの中に小さく丸めて何個も入れて吸う吸い方が良かった。効きはすごく強い。あまり味は美味しいものでは無い。


ポーレンは加工方法がまた違って、触れると崩れて粉々になる。吸い方はボングで吸ったり、ジョイントに大麻と混ぜて吸ったりする。


効きは大麻より少し強くて、味が美味しかった。特にポーレンは貴重だった。出回っているのは見たことがなかった。


その日はポーレンとチョコと大麻を混ぜてジョイントで吸うという贅沢な吸い方を満喫した。その後はいつも通り2人で散歩をした。
 

その日の世田谷公園は柑橘系の爽やかな匂いがした。直前に吸ったポーレンが鼻に残っていただけかもしれない。

 
記憶に浮かんでくる世田谷公園は何故だかいつも晴れている。自分達は晴れた日にしか公園へ行かなかったのだろうか。


いや、そんなことはないはずだ。
 

思い出は美化される。


人間は本能的に辛いことは忘れるようになっている。


記憶はとても都合の良い造りをしている。
 
 


 

このドラッグリポートは副作用も無く極めて事実に近い薬物接種体験を楽しむことができます。安心して服用して下さい。

※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。

Twitterではドラッグに関する役立つ知識を発信しています。是非フォローしてください。
https://twitter.com/sativadepakkaan