ドラッグは感情の振れ幅を作るアイテム【スマートジャンキーリポート8】

 


「お前と俺だって他人」

 


自分の人生を傍から見ているような感覚があった。


幼い頃から感情表現が苦手で、親はよく可愛げが無いと自分に言った。


生意気な子供だったんだと思う。反抗してますます感情表現が乏しく育った。


新しいことを始めるとすぐに及第点を取れるタイプで、努力して満点を目指すのは割に合わないと常々感じた。


手を抜いて他人より少しだけ良い位置に居る方が快適だ。努力をして満点を取れなかった時に自分の能力を計られてしまうようで嫌だった。


何かをやり遂げた経験も一度もない。流されるままの適当な人生を歩んだ。


自分にとってドラッグは感情の振り幅を作るアイテムだった。

 

「新幹線間に合わなくなるぞ」
「そろそろ出るか」
「タクシー呼ぶね」

 

夏の暑い日。帰省するタイミングで暇そうにしていた親友を連れて一緒に地元に行くことになった。


自分の地元は片田舎だ。都会で育った親友には楽しんでもらえるだろうと思った。

 

「てかアイテム持った?」
「そうだ忘れてた」
「紙も忘れずにな」 
「多分大麻足りなくなるけどどうする?」
「大麻くらいなら地元でも取れるよ」

 

自分達は旅行の際に必ず大麻とLSDを用意していた。素面で田舎に行くのはつまらない。


これがあればただの旅行もドラマチックに変わる。品川駅から片道5時間ほどかけて地元に向かった。


自分の地元は帰り道の電車が鹿を轢いて止まってしまうことがあるくらいの田舎だ。


LSDには自然がよく合う。田舎への帰省は絶好の機会だった。実家には適当に挨拶をしてすぐに出た。


仕事を辞めたとは伝えていたが、それからのことは一切話していなかった。詮索されるのが嫌だった。


親に心配はかけたくないが、嘘を付くのは自分の心にも親にも悪いと感じていた。

 

「実家行ってきた」
「どうだった?」
「どうもこうもない。普通だよ」
「ならよかった。天気いいしどっか行かない?」
「とりあえず紙食おう」

 

銀色のアルミホイルを広げ、ホテルでLSDを食べた。そして薬効が出始める前に森へ向かうことにした。


LSDを食べる時は海に行くことが多かった。いい機会だから今日は森に行こうという親友の提案からだった。


タクシーで向かい、森に到着した。摂取してちょうど1時間ほど経過したところだ。

 

「どう?効いてきた?」
「なんか今日の強い気がする」
「やっぱ?やたら目に来るなと思ったわ」
「ピークが楽しみだね」

 

そんなことを言いながら森の中へと入って行った。その森の中には滝があり、自分の好きな場所だったのでそこへ向かった。


森は普段より少しだけ不気味に感じた。木々達は「あまり見ない顔だね」と言っているように見えた。


木は奇妙な顔をしているものが多かった。友達にはなれない感じだ。自分達は更に奥へ進んで行った。


そして滝に到着した。この頃には2時間ほど経過していたかな。

 

「うわっ。滝って凄いな。唸ってる」
「自然の猛獣だなこれ」
「昔の人って滝に龍がいるって言ってたらしいよ」
「それ多分本当だと思う」

 

滝にはまるで龍が棲んでいるかのようだった。棲んでいるというよりは滝そのものが龍に見えた。


轟々と音を立てて滝壺に水が落ちる様子は凄まじい。滝壺から龍が現れて崖を登っているように見えた。


呆気に取られて見上げていると後ろに転びそうになった。

 

「ちょっと怖くなってきた」
「わかるわ。滝が自然界最強だ」
「滝が一番強い」
「だな。そろそろ帰ろうぜ」

 

そう言って滝を後にした。滝からは恐怖さえ覚えた。とてつもない生命力を感じた。滝の水は流れていた。流されていなかった。


そこに意思があるかのように。「自分の意思を持て」と強く言われているような気がした。


流されるがままの人生を歩んできた自分には滝の流れる音は耳が痛かった。


ホテルに到着して少し休憩した。お腹が空いたのでご飯を食べに行こうという話になった。地元はマグロが有名なのでマグロを食べに行くことにした。

 

「東京で食べるマグロとは全然違うなあ」
「やっぱり?喜んでもらえてよかった」
「食べ終わったら海行かない?」
「海も見たくなってきたな」

 

地元は良いところだ。自然が豊かでご飯も美味しい。ご飯を食べ終えた自分達は近くの海の向かうことにした。

 

「やっぱり海はいいね」
「滝とは全然違うよな」
「海は穏やかだ」
「表情が違う」

 

海は自分を受け入れてくれるような気がした。「おかえり」と暖かく声をかけてくれるかのようだった。


穏やかな海を見ながら大麻を吸って寝転び、空を眺めた。空は自分の生き方を肯定してくれているような気がした。


LSDは思考と感覚のドラッグだ。素面の状態とは違い様々な考えが浮かんで来る。感受性が豊かになり、五感の境目が無くなる。


視覚で認識したものから音が聞こえてきたり、逆に聞こえた音が視覚に変わったり、頭でイメージしたものが視覚化したりする。


物から感情を感じることもある。そして時間の感じ方も変わる。LSDを食べて過ごす一日は一週間、場合によっては一ヶ月にすら感じる。


そして翌日は何故か頭がスッキリとしている。LSDは心の洗浄になる。自分は幼い頃から親に

 

「あなたは何を考えているか分からない」

 

とよく言われた。自分の考えていることを話しても到底理解してもらえないだろう。だから話しても意味が無い。そう思い自分の内側をあまり見せなかった。


でも、時間が経ち親が子供のことを分からないのは当たり前だし子供も親のことが分からないのは当たり前。そう思えた。心に少しゆとりができた。


自分以外は皆他人。他人同士の価値観は違って当然だ。親友でさえ他人だ。とは言っても悲観しないでほしい。

 

「他人同士だからこそ共に過ごす時間は素晴らしい」

 

親友とは何年間もの時間を共に過ごしてきた。なぜ一緒にいたか?それは違う価値観同士が分かり合えていたから。それ以外の答えは無い。


違う価値観同士が一緒に居られることは素敵なことだ。だから君の周りの人間は大切にした方がいい。

 

最後に


時間は皆に絶対的なものだと思われているけど実際はそうではなく、相対的なもの。


時間は皆に平等ではないし、もっと言うと、

 

与えられた時間は平等だけど、その時間の流れ方は人によって大きく変わる。

 

時間は資産。限りがある。そして豊かになれるかどうかは使い方次第。


今過ごしている時間も常に過去になっていく。

 

 

このドラッグリポートは副作用も無く極めて事実に近い薬物接種体験を楽しむことができます。安心して服用して下さい。

※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。

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