【前編】楽しい記憶はなぜかLSDばかりだ【スマートジャンキーリポート11-1】

 

 

自分がジャンキー全盛期の時はLSDを食べて部屋で過ごすという選択肢は滅多に無かった。

 

外に出るのが好きで、普段とは違う視点で様々なものを目にしたかった。

 

LSDをやりすぎた時期、人が作った物が無機質で同じように見えてしまうという変な思考になったことがあった。

 

YouTubeを見ていても、これって光の点の集合だよな。なんて思うと途端に見る気が失せる。

 

だから外に出かけた。自然が好きで、よく旅行に行っていた。

 

思い返すと楽しい記憶はなぜかLSDばかりだ。ということで今日は熱海に行った話

 

「晴れてよかったなー」
「ほんとね、熱海に着いたら何する?」
「着いた時の気分で考えよう」

 

新幹線で熱海に向かっていた。品川から40分で行ける熱海はLSD旅行には最適だ。

 

新幹線の中で駅弁を食べてからLSDを口にした。この日は念のため二人で5枚持参して行った。ジョイントもたくさん持っていた。

 

到着して「景色の良いところに行きたい」という意見が一致したので、まずは高台にある熱海城へ向かった。

 

LSDは「自分はこうしたい」という自我がいつもより出やすい。

 

なので、何かを決めるときにはお互いの意見を聞いて擦り合せをしていくことがいつもより大事。

 

そして、勘繰りはいつも自分の心から生まれる。経験上ほとんどそうだ。

 

自分の心に嘘をつかないことで変な勘繰りは生まれづらくなる。

 

これを頭に入れてLSDを乗りこなしてほしい。シラフの時にも通ずることだから。

 

熱海城に到着し、とりあえず展望台を目指した。城の6階に展望台があり、喫煙所もある。

 

周りに人が居なかったので、外に面した喫煙所でジョイントを吸った。

 

「いいじゃんここ、景色最高」

 

展望台からは海と山が見える。普段海ばかり見ているので山に気を寄せてみた。

 

素面の時だと山を一つのまとまりとして捉えてしまうが、LSDを接種した状態での山は木々一本一本に意思があるように見えた。

 

「あの木はなんか周りより強そうだな」
「横の木が隣の木にビビってるように見えるね」

 

なんて喋りながら木を眺めていた。普段全体で調和が取れているように見える山だが、よく見ると木々それぞれが意思を持っている気がした。

 

生まれてから死ぬまで同じ場所に居なきゃいけない木は大変だ。木には自由が無い。なんてことを思い、タバコを吸ってから城を出た。

 

城の下に降りると、急に老人が話しかけてきた。

 

「ねえねえ、なんかやってる?」
「なんかって何ですか?」
「いやー、スポーツとかやってんのかなと思って」
「全然やってないっす」

 

自分達はどこからどう見てもスポーツなんてやってない風体だ。動きやすい格好で来ていたから老人にはスポーツをやってる人に見えたらしい。

 

「なんかやってる?」の一言で親友は大麻の匂いがバレたのかと思い少し勘繰っていた。

 

こっちはLSDも大麻もいい感じに効いているけどな。なんて思いながら話を続ける。

 

「ていうかなにしてたの?」
「熱海城行ってました」
「ダメだよこんなとこ来ちゃあ、歴史もクソもないのに」

 

どうやら熱海城は昔からある城ではないみたいだ。

 

「今から行くところは決まってるの?」
「何も決まってないっす」
「観光するなら貸し切りどう?安くするよ」

 

老人は貸し切りの観光タクシーの勧誘だった。

 

「良い人そうだし乗ってみる?」
「そうだな。アイテム持ってるからタクシーだと安全だよな」

 

すぐに決めた。「話は早ければ早い方が良い」というのが自分達のモットーだ。

 

二人とも人の話をあまり長く聞いていられない性格だった。LSDをやっている時は特にそうだ。

 

「じゃあ乗りなよ、どんなとこ行きたいの?」
「じゃあ城ヶ崎ってとこいいよ」
「オススメのところなら何でもいいですよ」
「火曜サスペンス劇場にも出てくる景色の良い崖があるよ」
「へー、崖いいっすね行きたいです」


「そういえばどこから来たの?」
「東京です」
「熱海には居なさそうな感じだもんな。仕事は?」
「んー。フラフラしてますね」
「そうなんだ。てかタバコ吸うかい?」
「タクシーなのに吸っていいんですか?」
「良いよ適当に窓開けて吸って」

 

この運転手はコミネさんという。後々聞いた話だと熱海の観光タクシーでは有名な人みたいだ。

 

コミネさんは答えるのが面倒くさいことや返答に困ることを一切聞いてこない。

 

これまでにそういう大人はあまり居なかった。大人はだいたい野暮なことを聞いてくる。

 

孫くらい年が離れているが、最初から気の合う友達みたいな感覚だった。

 

道中はお互いの話をしながら程なくして城ヶ崎に到着した。到着した時にLSDをもう1枚追加し、少し歩くと崖に到着した。

 

「どう?いい景色だろ」
「すげー、海に見えるあの白いとこってって渦潮って奴ですか」
「そうだよ。波が強い時は渦潮が見えるんだ」

 

崖から見下ろす渦潮は圧巻だ。明らかにいつも見る海とは様子が違う。

 

海はいつも穏やかだと思っていたがそうではない。

 

渦潮で流れる水は、水と水が戦っているようだ。食うか食われるかという水の気迫を感じた。

 

水も力が大きく、勢いのある方に飲まれて取り込まれていく。人間とは違って。見ていると吸い込まれてしまいそうになった。

 

親友は渦潮を見てラーメンのなるとを連想したらしく、渦潮を見ながらラーメンが食べたいと言っていた。

 

「あっちに吊り橋があるよ」
「行ってみましょう」

 

森からこちらに赤い舌を出しているかのような変な感覚を抱きながら吊り橋に向かう。

 

そして恐る恐る吊り橋を渡り始めた。一歩一歩歩いていると下から吹き上げる風で足が浮足立つ。

 

「もしかしてここから飛ぶと凄く気持ちいいんじゃないか?」

 

なんて感情を抱いた。LSDを食べている時はゲームをやっているような感覚になってしまう。

 

例えるなら1人称視点のゲームをやっているような。

 

もし死んでしまったとしても今ならコンテニューできる気がする。

 

変なことも考えたが無事吊り橋を渡って戻ってくることができた。

 

「おかえり。吊り橋どうだった?」
「なんか今なら飛べる気がしました」
「またおかしなこと言って」
「冗談ですよ。景色も良くて最高でした」
「そりゃ良かったよ」

 

「お腹空いてる?お昼どうする?」
「食べましょう」
「日本で唯一の深海魚が食べれる寿司屋に行ってみない?」
「へーそんなとこあるんすね」
「味が美味しいわけじゃないけど珍しいからさ、不味かったら違うもの食べれば良い」
「じゃあそうしましょ」

 

LSDも効いてきてしどろもどろに会話していた。会話をするのも難しくなってきていたので言われるがままに事を進めていった。

 

この後、深海魚の寿司屋と牧場に向かうことになる。ここから目に映った光景は凄まじかった。

 

 

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※この物語は全てフィクションです。違法薬物の使用、犯罪行為を助長するものでは一切ございません。

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